ののの・ド・メモワール

その日観た映画や本や音楽の感想を綴ったりしています

閲覧いただきありがとうございます。
日記のように色々なこと(主に読書、映画、音楽)のアウトプットをしていきたいと思います。まれに雑記も書きます。
実用的なことは書けませんがよろしくおねがいします

ヘミングウェイ・イン・パリス /ヘミングウェイ全短編1

好きな作家の一人であるヘミングウェイのパリ時代の作品集を読んでいきます。

今作の構成は第一部・われらの時代、第二部・男だけの世界

現在、第一部を読んでいる最中です。

そして個人的に敬愛するヘミングウェイの大きな特徴は2点

乾いた文体、そして巧みな省略。

ヘミングウェイの文体は本当に簡素で、凝った文章表現というものはなるべく避けていたようです。また記者としての経験からこのスタイルを編み出したとか。

次に省略。彼の作品は大切な部分をあえて書かずに読者の想像に委ねるところが奥行きを生んで読む度に感想が変化する自由さを獲得しています。

私はこの省略が一番好きです。

そういうわけで書いていこうと思います。

1.On the quay at  Smyrna /スミルナの埠頭にて

スミルナとは読む限りトルコの湾岸地域のようで、第一次世界大戦後の戦後処理のために駐留している士官の目を通してスミルナの埠頭を眺めているという一編。

ですが第一次世界大戦後であったり、駐留士官であったりというのは実は一切書いてありません。

トルコからの避難民の描写、そして輜重用のロバの処理

それを見る駐留士官の目線は戦争がどういうものか少しばかり伝わってきます。

 

2.Indian Camp/インディアンの村

医師の父親に連れられた息子のニックそしてジョージ叔父さんが、インディアンの出産に立ち会う一作。

本作もヘミングウェイの省略技巧がいかんなく発揮されています。

インディアンの女性が出産で苦しんでいるとなりで、興味なさそうにパイプを吹かす夫。子供が生まれると彼はその後に自殺してしまう。

またジョージ叔父さんが出産中に暴れるインディアンを押さえつける時に暴言を吐きかけたりと、これだけでどのような境遇で妊娠したかは色々と想像できてしまいます。

 

説明せずしてこれだけ想像力をかき立てられるヘミングウェイの描写の取捨選択。

一体どうやっているのか不思議です。

もっともヘミングウェイは天才ですから、どうやっているのか分からないのは当たり前といわれたそりゃそうですけど

でも学べるところがあればと思って読んでいます。

最後にヘミングウェイはこの省略に氷山の理論と名付けこう語っています。

 

その文章が十分な真実味を備えていれば、読者は省略された部分も感得できるであろう。『午後の死』・1932年