
グアテマラの作家ミゲル・アンヘル・アストゥリアスの短編『リダサルの鏡』を読みました。
カルメンの聖母の祭りが迫った村の食堂で皿洗いをするムラータの娘リダ・サルは密かにアルビスレス家のフェリピトに恋をしており、なんとか彼と結ばれたいと思っています。
そんなことを考えながら皿洗いをしていると、食堂に聖母の祭りの世話役フォルテリオと供回りの装束を準備する目の悪い男ベニート・ホホンが現れます。
リダ・サルはフェリピトと結ばれるための呪いを行うために彼が着る装束をホホンから借り受け、呪いの手順を踏んでいくのでした。
今作はロマンチックなお話かと思えば、出てくる人々は曲者揃いで最後にはリダサルが呪いの成就に身を捧げ、恐怖と狂気とロマンチックな気持ちがごちゃ混ぜになった不思議な感覚を読後に与えてくれます。
それでいて変な登場人物たちに妙に納得してしまうのは村の描写が優れているためだと思います。
冒頭に描かれる村の様子から砂埃がたちこめ、そしてアルビスレス家の描写へと移っていきます。
アルビスレス家の主であるフェリーぺとその妻ペトランヘラの詳細が語れるも、彼らの息子であるフェリピトについてはあまり語られません。
こんなに語られるのだからこの夫妻が主要人物だろうと思っていると村で皿洗いをする娘が登場し、彼女がタイトルにあるリダサルであることが告げられるのです。
読み進めるとどうやらフェリーペとペトランヘラの姿はフェリペトとリダサルの将来の姿であることが暗示されつつも実はそうはなりません。
もう少しで全体像を少しは掴めそうだと思うと少しも掴むことができないもどかしい気持ちでページをめくる楽しさに溢れた作品でもあります。
またホホンという男も目が悪いのか疑わしく、そもそもなぜ目が悪い男に装束の準備をさせているのかと頭に浮かびますが、そんな細かいことは気にしなくなるほどに癖が強い人物です。