
筒井康隆先生の『乗越駅の刑罰』を読みました。
作家として大成し七年ぶりに帰郷するも駅にて無賃乗車を疑われた入江の顛末を描いた作品です。
のほほんとした雰囲気が伝わる田舎の小さな駅が舞台であるものの凄惨な出来事が繰り広げられます。
各駅停車に乗り全く知らない田舎の街で下車しプラットフォームでぼーっとするミニトリップを定期的に行っている私も無人駅の仕様に戸惑うことが幾度かありました。
ICカードの読み取り機がぽつんと置かれ本当に駅員がいない無人駅に降りセキュリティのゆるさ具合を目の当たりにすると律儀にICをかざして電車に乗る人はいるのだろうかとふと思ってしまうほどです。
そんなことを思いつつ読み取り機にICカードを読み取らせ数千円を払って見ず知らずの町に降り、ただ散策してまた帰るというミニトリップで私は一体何を得ているのか疑問に感じています。
今作の主人公である入江はまさにそのような田舎へ帰郷し、無賃乗車を咎められた末に悲惨な末路を迎えます。
入江を咎める人物たちは入江を咎める駅員とその上司そして入江の家族です。
彼ら全員はよってたかって入江を罵倒し暴力まで奮う嫌な人々で、この人間の醜悪な部分の描写が巧みで彼らは現実性を帯びて浮かび上がります。
読んでいると「うわあ・・・」と思うも、駅員たちの行動や言動に少なからず共感することもあり自分に対しても「うわあ・・・」となります。
そんな「うわあ・・・」な作品でした。