
ソウル市の漢江に現れた怪物(グエムル)と怪物に家族を囚われたパク一家の奮闘を描いた作品です。
テムズ川、ハドソン川、セーヌ川、隅田川と大都市には大河が流れソウル市には漢江が流れています。
ソウル市民にとって身近に流れる漢江は都市の発展と共に汚染が進み河川環境はブラックボックス化し、漢江の怪物はその末に生み出された肉食の水棲動物で大型のサンショウウオのようにも見えます。
このグエムルが漢江沿いの公園に突如出没し多数のレジャー客に襲いかかり、公園で売店を営むパク一家の長男カンドゥの娘ヒョンソが怪物にさらわれ、ここから怪物よりもキャラが濃いパク一家のヒョンソ救出が始まります。
生き残ったレジャー客たちは検疫所に隔離されることになり、理由は怪物が未知ウィルスの宿主であり感染防止のためです。
これは表向きの理由で実際は在韓米軍が毒性物質を漢江に垂れ流していたことが怪物誕生の大きな原因で、この事実が世間一般に流布したら米韓関係に亀裂が起こり米韓両国にとって秘匿しておきたい。
そのようなことでグエムルは新種ウィルスで突然変異した宿主であるという腑に落ちるストーリーが用意されます。
カンドゥは怪物の血を浴びた危険性の高い感染者なので厳重隔離され、接触したパク一家も検疫所に閉じ込められています。
そこにヒョンスがカンドゥの携帯に電話をかけてきて彼女が生きていることが判明します。
カンドゥならびにパク一家と検疫所との戦いが始まり、そこには緊急事態下の社会と個人の関係が浮かび上がってきます。
またこのような状況で家族を助けに行くのは自分勝手なことなのかとも考えさせられます。
パク家は頼りにならない行政を無視しヒョンスを助けに向かうので第三者の立場から見たら感染者脱走という緊急事態です。
このように家族というテーマが今作を包んでいると漢江の怪物が大量に人間を食べているのは繁殖に向けてのエネルギー貯蓄のように見えてきます。
ヒョンスは下水道の暗渠にある側溝にグエムルに吐き出され隠れつつ生き延びていますが、もしかしたら産卵した後の子どもたちのために餌として吐き出されたのではないかと思っています。
もしそうだとしたら怪物の境遇もかわいそうなものです。
しかし、今作はそんな深刻な社会を描いた作品ではなくコメディカルなパク一家のヒョンスを描いています。
パク家の家長であるヒボンはいいキャラをしており、一家が検疫所を抜け出し自分たちの売店で食事をしているとカンドゥはそのまま寝てしまいます。
そんなカンドゥの姿を見て弟のナミルと妹のナムジュは呆れていますが、ヒボンは兄に対して非情な態度を取る彼らに涙を流しながら「カンドゥに優しくしてやれ」と諭します。
感動的なヒボンの涙の説得をしていますが、ナミルとナムジュは眠りに落ちているシーンは特に印象に残っています。
そんな長男思いのヒボンがカンドゥの勘違いでグエムルに殺されてしまうシーンはとても切ない。
この一件によりパク一家の結束と愛が確かに芽生えた大切なシーンです。
怪獣映画に見せかけて家族愛を描いた作品でした。