西ドイツ=フランス合作ですが舞台は全編アメリカの西海岸という作品。
フランスのパリは一切出てこずカリフォルニア州とテキサス州を主な舞台としたロードムービーで、「パリとは一体???」と疑問が浮かびます。
実はこのパリはテキサス州にあるらしいパリス、それは本作の主要人物・トラヴィスにとって大切な街です。
なのでタイトルは『パリス、テキサス』の韻を踏んでいる方が正しいのでは?と思ってしまいました。
しかしフランスも重要な要素になっているのがこの作品です。
物語は4年間行方不明だった兄のトラヴィスがテキサスで保護されていることを知った弟のウォルターが迎えに行き、テキサスからロサンゼルスまでを車で共に旅をしながら展開されていきます。
兄弟二人きりで車で旅するとか私は絶対に嫌なので、ウォルターの懐の深さが肌身に感じられます。
トラヴィスは最初は全く喋らず不気味な男でしたが、段々と心を開いたのか少しずつ話しはじめますが頑なに4年間なにがあったのかは言いません。
ロサンゼルスのウォルター家にはトラヴィスとその妻ジェーンが置いていったハンターくんがウォルター・アン夫妻によって育てられています。
そんなハンターくんも急な父親の帰還に割りとすんなり対応する環境適応能力の高さを見せつけますが、自分たちに子供がいないので我が子のようにハンターくんを育てていたアンの方はそうはいかず取り乱し、アンはフランス出身という設定のため感情的になると「ハンター」が「アンター」になってしまったりちょくちょくフランス語混じりで喋りまさに我が身が引き裂かれるような思いであることが伝わってきます。
そしてトラヴィスは妻・ジェーンを探しに今度はテキサス・ヒューストンまで赴く旅へ出発し、なんというのか分からないマジックミラー越しで対面式するアメリカの風俗店か何かでジェーンを発見。
このマジックミラー越しのシーンはお互いに向き合わないといけないけれど、まだ準備が出来ていないことを演出していて二人のぎこちない関係すら表現しているように思えました。
定住し安定した生活がなにかで変わってしまったがために旅に出ているのか。それとも旅をすることが目的でその生活を捨て去ってしまったのか。
道の先になにかあると信じて突き進むよりもそこへ行き着くまでの時間がずっと大切なのだろうなとロードムービーを観るたびに思っています。