ののの・ド・メモワール

その日観た映画や本や音楽の感想を綴ったりしています

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日記のように色々なこと(主に読書、映画、音楽)のアウトプットをしていきたいと思います。まれに雑記も書きます。
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ポルノとJLGと小津『ドレミファ娘の血は騒ぐ』

ドレミファ娘の血は騒ぐ

 黒沢清監督の監督2作目『ドレミファ娘の血は騒ぐ』を観ました。

高校の先輩・吉岡を追って田舎から東京へやってきた秋子が、吉岡の通う大学で「恥ずかしさ」を研究する心理学科の教授・平山の実験に参加した後にゲリラ戦に身を投じ銃殺されてしまうというストーリーです。

 この作品は開始から終わりまで徹頭徹尾ジャン=リュック・ゴダール監督の模倣を行っています。

役者がフランス人でセリフがフランス語であったとしたら完全にゴダール監督作品だと思ってしまうくらいにはゴダール作品です。

ただ今作はまだ分かりやすかった60年代のゴダール作品と何をやっているのか理解できない80年代のゴダール作品が結びついているという印象です。

これだけ我を出さず完全にゴダールを模倣してしまうのは驚きます。

音楽や漫画で同じことをしたら下手したら訴訟に発展してしまいそうだと思いました。

 しかし、ゴダールだけの模倣では終わらず音楽では小津安二郎監督の模倣を行っています。

平山教授が学生と自転車に二人乗りし秋子を追うシーンで流れる劇伴は笑ってしまうくらい小津作品で、そもそも平山教授が『東京物語』で笠智衆さんが演じた・平山周吉と同姓同名です。

こうしてゴダール監督の演出に小津監督の劇伴を添えたポルノ作品というなんとも意味の分からない作品へ仕上がっています。

 「恥ずかしさ」の研究のために女子学生に協力を願い出て研究に邁進する平山教授の姿は黒沢監督の自己投影のようにも思えました。

 そして最後は迫真?のゲリラ戦へ、しかし敵のようすは見えず秋子が属する平山ゼミの面々はAK47一丁のみで銃弾が飛び交っているであろう野原を駆け抜ける最中に続々と戦死していく様子を捉えたシークエンスが私は一番好きです。

ゴダール監督の作品を観た後に今作を観たらより楽しめただろうと思います。