アラン・モイル監督作の『エンパイア・レコード』を観ました。
しかし、昨日アップされた『恋のつむじ風』の前に観ているので時系列がバラバラになっています。
というより土日はもう何がアップされているのか把握していません。
この作品はレコードショップが舞台ということもあり、音楽に力が入っていて私はサントラを聴きまくっています。
資金難で大型チェーン店への買収危機に陥っている老舗レコードショップ・エンパイア・レコードの店長や店員たちの1日を描いた作品です。
といってもどうやって買収を乗り切るかというテーマは希薄で今作はエンパイア・レコードの人々を映している群青劇です。
店員たちは皆個性が強く店内の雰囲気は彼らの個性に引っ張られるように個性的な人々で彩られています。
エンパイア・レコードはただのレコードショップというよりはユースカルチャーの発信地兼文化施設という印象を抱きました。
おそらくこの街の若者たちは週末になるとここに集って音楽に浸っているのでしょう。
ただエンパイア・レコードがこのような地位に勝手に就いたわけではなく、店長のジョーの貢献が大きいと思いました。
店長のジョーは非常に寛容な人物で売上金をカジノで増やして店を救おうとして全額失った店員のルーカスを怒りはしますがクビにすることもなく、また万引きをした少年のウォーレンを雇ってしまうなど「寛容にも程があるだろ」と思ってしまう人物です。
そして私は本作でジョー店長が一番好きです。
そんな個性あふれる店員たちですが、皆各々が問題を抱えているようで店舗買収危機を知って各々が抱える不安が噴出する人物もいたりいなかったり。
出勤するなりファックサインを決め、そのままトイレで坊主頭(おしゃれにいったらバズカット)にしてしまうデボラ、勉強のストレスを落ち目のスターやアスピリンで紛らわせる優等生コリーと彼女から「slut!」と言われてしまうジーナなど不安定な女の子たちは各々かなり深刻な問題を抱えています。
対して男の子たちはどうかというと、美大を目指すA・Jはずっとポップか自分の作品を描いていて密かにコリーに思いを募らせたり、店内で終始ふざけるバンドマンのマークと音楽オタクのエディと彼らは基本的に楽しそうです。
不安を抱える女の子たちと今が楽しいならいいんじゃね?と言わんばかりにふざけている男の子たちの構図はもうほぼ学園ドラマですが彼らの問題に対して深堀りはしないところが本作の最大の魅力です。
あくまで主役はエンパイア・レコードだと私は思いました。
そして彼らを見守るジョー店長は彼らの個性を尊重し育てる先生のようだとも今思います。
こういう個人店が街にあったら嬉しいなと思う一作でした。