前回にB級映画のことを書いたくせにがっつり名作の感想を書きます。
といってもこの作品を観るのは今回で3回目。
何回観ても楽しめ感想が変わるビリー・ワイルダーの大傑作です。
邦題では『サンセット大通り』なのですが、私はずっと原題通り邦題も『サンセット・ブールヴァール』だと思っていました。
タイトルは認知されている『サンセット大通り』で本記事では原題の方が好きなのでサンセット・ブールヴァールで書かせていただきます。
・サンセット・ブールヴァール ビリー・ワイルダー監督
映画雑誌やサイトなどのオールタイムベストで大体トップテンにランクインするケチつけるところが一切ない名作。
無声映画時代に大活躍していたグロリア・スワンソンとエリッヒ・フォン・シュトロハイムが出演しています。
この作品に出演承諾するスワンソンとシュトロハイムの器の大きさに敬意を払います。
またツイン・ピークスのデヴィッド・リンチ演じるFBIフィラデルフィア支局の捜査官ゴードン・コールの元ネタの人物が出てきます。
ゴードン・コールはツイン・ピークスでは主要キャラですが本作ではちょい役です。
しかし、デヴィッド・リンチが本作のゴードン・コールの話し方から髪型まで完全に真似ていることに今回観て気づきました。
内容は仕事がなくアパートの家賃を滞納し資産差し押さえで車を手放さなければならなくった貧乏なB級映画の脚本家のジョー・ギリスが迫ってくる取り立て人から逃れる内にサンセット大通り沿いの廃墟のような豪邸にたどり着きます。
そこにはかつての大女優ノーマ・デズモンドと彼女の執事・マックスが2人だけで住んでおり、ジョーはノーマの復帰作の脚本を手直しすることを手伝うことになります。
ノーマを演じるのがグロリア・スワンソンでマックス役はエリッヒ・フォン・シュトロハイムです。
作中で復帰作をパラマウントに送り返事を聞きにパラマウントスタジオへ向かうシーンではセシル・B・デミル監督がカメオ出演しています。
地味にバスター・キートンもカメオ出演しています。役どころは無声映画時代の忘れられたスターという扱い。
無声映画時代の大スター・ノーマは過去の栄光と成功にずっと固執しており、その姿は可哀想よりも哀れでしかたありません。
いつまでも昔の成功や栄光にすがって生きている人間ほどかわいそうな存在はいないとその姿は物語っているようでした。
自分は未だに大スターであると信じて疑わない様子は自分に言い聞かせている内についに落とし所が見つからず信じ続けるしか方法がないという状況なのかもしれません。
そんな彼女を支える執事のマックスも本当はそのような姿を見たくはないのでしょう。
旬が過ぎたら捨てられるハリウッドが見えてきます。
もしかしたら人生のハイライトが既に終わったと思っている人間に残されているのは過去の栄光しかないのかもしれません。
またはノーマのように「インドのマハラジャが自分の靴下ほしがった」や「毎月ファンレター数万届く」など現実に虚飾を加えないと生きていけないのかもしれません。
このように書くとものすごい悲惨で悲しい話のようになりますが、しっかりとエンターテイメントです。
というのも雇われ脚本家のジョー・ギリスがこの大豪邸で死んでいるシーンから本作は始まるサスペンスであり、サスペンスを基調にする中でユーモアが散りばめられているセリフの数々にビリー・ワイルダーの天性のバランス感覚を感じます。
本作で最も印象に残るのはラストシーンのジョーを殺したノーマの元に警察や新聞記者そしてニュース映画の撮影隊が押し寄せ、ノーマは自分の復帰作のために人々が集まったのだと思いその場で演技を始めるシーンだと思います。
あまりにも哀れな姿に同情心一色の人々の前で演技するノーマ。
なんとも悲しい大女優の最後です。