昭和の日活映画をほとんど観たことがなかったので、なんとなくこちらの『恋のつむじ風』を観ました。
主演の松原智恵子さんは今作が初主演であったようですが、今作公開の1969年から数年も経たずに日活は商業映画から一時撤退するので、もしかしたら日活映画で最初で最後の初主演作なのかもしれません。
また梶芽衣子さんが旧芸名で出演しています。
ストーリーは北海道の田舎で暮らすアカネが友達のアオイに連れ出される形で上京し田舎と都会のギャップに悩みながら暮らしてみるというものです。
アオイは東京でルームシェアで暮らすイラストレーターで彼女のルームメイトのミドリはモデルをしており赤いチンクエチェントに乗っています。
イラストレーターにモデルにチンクエチェントと当時の都会のイメージは横文字由来なのだなと思いました。
そしてここからは田舎と都会の価値観で3人が対立することもなく、アカネを追いかけてきたフィアンセのシュウヘイさんが出てきてアカネを連れ戻そうとしたりするだけです。
ただ60年代後半のユースカルチャーの風俗資料としては興味深い作品だと思います。
本作の中盤に唐突に『ブルーライトヨコハマ』を歌う女性歌手が出てきます。
彼女のヘアカラーは見事なカッパーブラウンだったので、どうやらヘアーカラーはかなり一般的であった事が伺え、私が以前『男はつらいよ』で抱いたさくらのブラウンヘアーの謎が少しだけ解けました。
そもそもミドリのヘアカラーがオレンジブラウンなのでそこで気づくべきなのですが、彼女が出てくるとセリフで何を言っているのか分からなかったのでヘアカラーどころではありません。
ミドリの滑舌やセリフのトーンが問題なのではなく、ふんだんに散りばめられた若者言葉が原因です。
これを理解するのが本当に大変で、若者言葉の賞味期限の早さを感じる次第です。
ユースカルチャーが一過性のものである所以もあるのでしょうが脚本に若者言葉を使うのはかなり危険なことだと私は思います。
あと一つ気になったことはグループサウンズやコーラスグループのポップスが微笑ましかったくらいです。
今作の途中では男性コーラスグループのミュージックビデオのようなシーンがストーリーとは何の脈絡もなく挿入されているのですが、その弾ける笑顔と演歌風にアレンジされたソウルのアンバランスさが絶妙にダサくて笑いました。
アカネをガールハントしザギンでランデヴーしたあとにアヴァンチュールしようとしたキザでナンパなシティ・ボーイのフミヒコも終始弾ける笑顔で白い歯を見せつけていたので、この当時の価値観では都会で洗礼されたら弾ける笑顔になるということだったのでしょうか?
歴史・風俗資料として観たら面白い作品ですが、映画作品として観るとかなり微妙な一作でした。