ののの・ド・メモワール

その日観た映画や本や音楽の感想を綴ったりしています

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コゴナダ監督のデビュー作『コロンバス』

コロンバス

 コゴナダ監督のデビュー作『コロンバス』を観ました。

高名な建築学者のリー教授がインディアナ州コロンバスにて突如倒れてしまい、韓国で働く彼の息子・ジンは見舞いのために同地へ赴き、リー教授の講演会に幾度も参加している図書館スタッフのカサンドラ(ケイシー)と出会い彼らが交流するというストーリーです。

 舞台のインディアナ州コロンバスは人口5万人程度と小規模な小都市で建築が有名な街なようです。

こういう小都市に将来住みたいと願ってやまない私として、舞台だけでもう満足してしまいます。

そして今作は小津安二郎監督作の『麦秋』から影響されたとコゴナダ監督は語っています。

 それでは今作のどういったところが小津安二郎監督へのオマージュでありトリビュートなのか思ったことを書いていきます。

最初に気づくことは固定ショットの画作りだと思います。

小津監督のようにワンショットずつ入念な画面構成を行われており、本当にデビュー作なのかと思ってしまうほどです。

しかし小津監督の作品は遠近感がかなり希薄で平面的に調和されているのに対して、コゴナダ監督はきっちりと遠近感を醸し出しつつコロンバスの名建築群の存在感を強調しています。

 次に気づくことはケイシーとジンの両親は作中に出てこないところです。

小津監督の作品も基本親の片方が画面に出てくることがないので、ここはオマージュであることが伝わり今作の中にはリー教授の私物と思われるピケ帽がカウチに鎮座しているショットが数秒映されます。

ピケ帽は小津監督の愛用品だったようなので、この演出はぐっとくるものがありました。

決して小津作品をそっくりそのままを移植はせずに制作されていることが伝わります。

 また蓮實重彦さんが小津作品の空は晴天であることが基本で雨は滅多に降らないことと白昼の中の映画と指摘していますが、今作『コロンバス』は雨が降っており夜中の映画であると思います。

晴天のコロンバスを絶対に撮らないという強い意志を感じるほどコロンバスは常に曇っているか雨が降っています。

この要素では小津監督とは正反対のことを行っていることは印象深く感じましたが、今作を観て思うことはコロンバスは雨が似合う街だということです。

作中にあるジンが雨が降る庭を眺めるショットの美しさは個人的に今作のハイライトでした。

小津作品を一作観てから今作を観るとより楽しめそうな作品でした。