映画一本観るのは結構大変なことで主に3つの力を試されている気がします
3つの力とは集中力、体力、知力
大して面白くもないのに上映時間が2時間近くもあれば集中力との戦いです。
熱量が凄まじい叙事詩的作品を観ようとなると体力との戦いになります。
アラビアのロレンスやラストエンペラーやアマデウスなどは気軽に観たらいけない気がする。
何が起こっているのか分からないような難解な作品だと知力との戦いです。
私はこの3つの力がほぼ最低ランクなので映画の好みはかなり狭くハリウッドの大作は観るのが疲れるから全般的に苦手でミニシアターで公開されるような難しそうな社会派作品も遠慮してしまう。
このような作品を敬遠しているので必然的にほぼ映画を観ません。
もうこうなってくると映画をあれこれいう資格すらないのですが、そんな私にもちゃんとした名作判断基準があります。
―ショットが美しいかどうか。ストーリーはどうでもいい―
偉大な映画監督の名言っぽくなりましたがこれだけです。画が美しいならそれだけでいいのです。
画も汚くてストーリーも全く面白くないというのはもう本当に最悪だけど
ストーリーを重視しないので何も始まらず何も起きないスライス・オブ・ライフやめちゃくちゃな内容のB級映画が好みです。
それでショットが美しいならもう最高です。
そんな私にドンピシャではまったのがロスト・イン・トランスレーション
初めて観たのBSの深夜放送でした。もうその時から定期的に見返しています。
ハリウッドスターのボブと新婚のシャーロットが東京で交流するだけでそこから何か始まるわけでも何か終わるわけでもない。
ボブとシャーロットは東京でバーやクラブやカラオケやストリップを楽しむのですが、これが本当に良いショットの連続でただ眺めているだけでも楽しめます。
特にパチンコ店を駆け抜けるシーンはヴィヴィッドな色合いが最高です。
夜の東京は本当に魅力的だなと眺めるだけでお腹いっぱいです。
ここで茶道や書道や柔道なんかやらなかったのがこの作品の素晴らしいところであると思います。もしこんなことをしていたら一気に嘘くさくなって途端にちんけな日本紹介動画になっていたでしょう。
書いてある文字も言葉も一切分からず行き交う人々も他人種の異国の地にぽつんと置かれた二人が抱く不安や孤独がお互いを惹きつけ心の溝を埋める交流をするのが本作の大きなテーマであると思います。
その中にいきなり日本文化がどうのこうのは違和感満載になってしまう。
そんな二人ですが作中では出会ってから数日間ずっと共に行動をしていたわけではなく、ボブは富士山の麓でゴルフをしてシャーロットは一人で京都に行きます。
特に京都のシーンは東京の喧騒と対比されるように静寂に包まれています。
もしあれ以上京都を廻っていたらテーマがぶれてしまっていたでしょう。
そしてラストはボブとシャーロットが新宿の通りでお互い包容するシーンはもう二度と会わないと思われるのにそこには悲壮感のようなものはなく爽快感があります。
こんなに気持ちのいいラストって他にあるのかなと思ってしまいます。
この作品はなぜか夏と冬に観たくなるのであと4ヶ月くらいしたらまた観るでしょう。
何回観ても飽きません。