私は永らく映画館から足が遠のき最後に行ったのはいつか考えてみたらコロナ禍以前に東京に旅行したときだと分かりました。
なぜか分かりませんが京都駅で「そうだ。東京に行こう。」とその場で新幹線の切符を買ってそのまま品川まで行きました。
辺りはすっかり暗くなっており東京へ行ったはいいけど特になにかしたい訳でもなく安直に新幹線に乗ってしまったがために予算がかなり逼迫してしまい後悔しながら都心へ向かい山手線に乗り渋谷かどこかの映画館に入って映画を観ました。
ただ何を観たのか全く覚えてません。
思い出そうとしても何も思い浮かばないのでよほど印象が薄かったのかもしれないけれど、普通ふらっと遠出して観る映画とか覚えてるだろと思うのですがなぜなのでしょう。
映画を観終わると流れ着くように荻窪へ行き居酒屋で仲良くなった人達と一緒に呑むという普段の自分からは考えられない大胆な行動をし翌日その内の一人の方に東京案内していただくことになり人の温かさに触れた素晴らしい体験でした。
やっぱり旅は人とのふれあいが一番ですね。
ただ新宿御苑に入るのに料金かかることはびっくりしました。
あの楽しかった思い出に耽っているとヴィム・ヴェンダースもまた東京へ行ってドキュメンタリーを制作していることを知って早速観ました。
その感想を書きます。
・Tokyo-ga 東京画 1985年作
タイトルにあるようにヴィムが東京へ行ってドキュメンタリーを撮るのですが観光目的ではありません。
彼は熱烈な小津安二郎のファンのようで小津が撮った東京をこの目で観たいと東京へ向かったのです。
しかし小津作品に描かれる東京はもう30年以上も昔、本当にあの頃の東京は残っているのだろうかとヴィムはカメラを回し続けます。
素晴らしいショットやシーンの連続でただ眺めているだけで楽しめます。
作中でヴィムも「ただ眺めているだけでいいものを作りたい」と語っているので私はすっかり彼の思惑にはまっていました。
新宿ゴールデン街へ行き望遠50mmレンズ(※小津監督が好んだレンズ)でバーや居酒屋を撮ってみるとそれは小津作品のようでした。
パチンコ屋やゴルフ練習場、そしてなぜか食品サンプル工房など東京観光と一切無縁な場所へ赴き小津安二郎の東京を探します。
また笠智衆や厚田雄春などの小津作品の関係者の元に行きインタビューを行い、その思い出などをカメラの前で語ってもらい演出や撮影がどのように行われていたのかヴィムが聞いていると感極まって厚田さんは涙を流されていました。
ヴィムは東京で小津安二郎を探せたのでしょうか?