・アメリカ、家族のいる風景 ヴィム・ヴェンダース
ヴィム・ヴェンダースの作品を大きく分けると
1.予算が少なく自由で少人数により製作された作品
2.予算がそこそこできっちりと脚本に沿って製作された作品
この2つに分けられるような気がするのですが前者は傑作ぞろいなのに対して後者は「これは・・・」となってしまう作品が結構あります。
そのような中でこちらの『アメリカ、家族がいる風景』は後者に入ると思います。
原題は”Don't come knocking"と私はこちらのタイトルのほうが好きです。
というのもこの作品のテーマは「ほっておいてほしい」なのではと思ったからです。
邦題を見るとなんだか家族愛がテーマのハートフルストーリーという印象が強くなってしまいます。
ハリウッドの落ちぶれ西部劇俳優・ハワードは何を思ったか撮影中に逃亡し母親の元に行き自分に子供がいることを色々と記憶を巡らせたハワードはモンタナ州ビュートまで会いに行きます。
ロードムービーの名作家ヴィム・ヴェンダースの手腕が発揮されておりアメリカ内陸部の広大な大地、地方都市、カジノの目がチカチカする内装、そしてビュート
その全ては「おお・・・」と唸ってしまうほどに見とれてしまいます。
特によかったのはビュートの町並み。
Googleでこの街を見てみると廃れた地方都市なのですがヴィムが撮るとこんなに魅力的に見えるのかと思ってしまいました。
そしてもっとも印象深いのは、いきなり父親が現れパニックになるハワードの息子・アールが自宅の家財を2階の窓か外に投げ捨てている際中にハワードが彼の元へやってきます。
そして投げ捨てられたソファに腰をかけるシーンは青空と星条旗はためく錆びた鉄塔と
息子に拒絶され自分はなぜビュートに来たのか自問自答するハワードのミスマッチさと鮮やかな色彩と構図に魅入るかぎりでした。
これだけでもう満足です。
そしてなんとハワードは自分の娘にもこのビュートで会うのです。
母親の骨壷と共にビュートにやってきた女性・スカイがどうやらハワードの娘のようで「ハワードどうなってんの」と思う次第ですが、この辺りの説明は作中で一切描かれていません(と思う)
一応撮影したけど編集で切られたのか最初から描かないつもりだったのかどちらか分かりませんがヘミングウェイの「大事なところはあえて書かずに省略する」という言葉を思い出しますが結構もやもやしてしまうのも確かです。
しかしハワードの「ほっておいてほしい」という感情を尊重した結果なのかもしれません。