・夢の涯てまでも ヴィム・ヴェンダース
昨日に引き続きヴィム・ヴェンダース監督の『夢の涯てまでも』の続きを観ました。
日本の箱根からアメリカへ向かったクレアとトレヴァー、そしてこの二人を追うクレアの恋人で作家のユージーンとトレヴァーを探すためにクレアが雇った探偵のウィンターもまた跡を追います。
トレヴァーは父親が映像を脳内に転送するゴーグルを使ってオーストラリアにいる盲目の母親のために世界中の映像を集めていることとアメリカから技術を持ち出したことでアメリカから追われているために世界中を転々としていたことを告白し、また本名はサムと告げます。
こうしてクレアとトレヴァー改めサムそして跡を追うユージーンとウィンターたちはオーストラリアへ。
セスナ機を調達して母親たちの元へ向かっている最中に制御不能の核衛星が大気圏内でアメリカに撃墜され電磁パルスが発生し飛行機の計器やオペレーションが停止してしまい、不時着します。
ハリウッド映画ならNASAと国防総省の管制室で「イエーイ!!!USA!!! USA!!!」となっていそうなシーンでした。
広大な中央オーストラリアを歩くシーンは最高で、特にマジックアワーの中をずんずんと進んでいくシーンは本当に素晴らしいです。
ここがこの作品の個人的なハイライトでした。
その後にクレアとサムは母親に再会し、父親がいる中央オーストラリアのムバンチュア族のコミュニティ兼サムの父親・ヘンリーの研究所へ。
正直ここからはあまり印象に残っていなくてよく覚えていません。
ただ恋人のユージーンたちもこの研究所に訪れ、コンピューターが使えないのでムバンチュア族の子どもたちが遊びで使っていたタイプライターを使いクレアの物語を紡ぐことを始めるのが印象的でした。
途中からヘンリー・サム親子は夢を映像化することにこだわりはじめ、急にゴダールのような実験映像が始まりびっくりしました。
この2点以外に印象に残ったことはやっぱり特にありません。
5時間ぶっ続けで観ていたら「まだ終わらんのこれ・・・」という気持ちが湧いていたことでしょう。
私はこの作品はロードムービーの実験映画であったのではないかと思います。
世界中を巡りに巡る叙事詩的ロードムービーを作ることは出来るのだろうかというヴィムの仮説から今作は生まれ、結果的に5時間弱というとてつもない上映時間になり興行的にも失敗してしまいました。
しかし本作を観るとこの作品はやっぱりそのくらいの上映時間がないとクレアの壮大な旅を表現することは難しいと思います。
ヴィム・ヴェンダースの壮大な実験映画であり、結果的にこのような壮大な世界観の中でロードムービーを製作するのは大変困難であることが分かっただけでも意義の大きい作品だと思いました。
しかしヴィムは俳優にアドリブで演技をさせ即興でカメラを回すことに天性の才覚が備わっている名作家なので、単純にこういう作り込みすぎて自由性を失ってしまう作品でその才覚を活かしきれなかっただけなのかもしれないと思ったりもします。
ただの失敗作や駄作ではないと思いますが、忍耐力が相当強くないと全部は観れないのでおすすめはできません。
そして本作の最大の功労者は撮影のロビー・ミューラーです。