私はモノクロ映画がすごく好きです。
観ているとよく分かりませんが水族館に行ったような気分になります。
たぶん観ていると癒やされるのだろうと思います。
色が白と黒だけで統一されていて陰影の美しさやそれによって被写体が明瞭に映らないところに魅力を感じます。
あとフィルムとデジタルのモノクロはちょっと違う気がします。
完全に主観ですがデジタルはちょっと明瞭すぎるような気が。
私はフィルムの方が好みです。
そんな私は久しぶりにヴィム・ヴェンダースを観ていました。
・さすらい ヴィム・ヴェンダース
とてもゆったりした作品で上映時間は3時間近くあります。
大型ワゴンで町を転々と巡り映画館で映写機の修理を行うブルーノが川岸にワゴンを止めてくつろいでいると、VWビートルをとんでもないスピードで川に突っ込んで死のうとしたロベルト*1と出会います。
2人は一緒にワゴンに乗り町を巡ります。
この旅には特に目的がなく、2人の過去も断片的に語られるだけで旅に出る要因はよく分かりません。
さすらいを続けて何か見つけようなど意気込んでいません。
お互いに旅に何か意味を与えたいと思っていないから行動を共にできたのであろうと思います。
しかし最後にはロベルトは変化を求め新しい旅へ向い、ブルーノと別れます。
ブルーノのワゴンとロベルトが乗る列車が並走するラストシーンは向かう方向は違うけど同じ方向を向いているという粋な演出が映えています。
そして撮影の魅力もとても大きく、特にロングショットが素晴らしいです。
映写機を修繕したりファインダーを覗くブルーノの姿を捉えたショットはヴィムの映画愛が伝わってきます。
本作に関係ないのですが私は映写技師に結構憧れています。
ああいう大きい映写機いじるのすごい楽しそう
ヴィムは若い頃に画家を目指していたそうですが、その素養が遺憾なく発揮されている作品だと思いました。