終身刑の罪で刑務所に収容されながら鳥類学の権威的存在になったロバート・ストラウドの伝記的な作品です。
タイトルにはアルカトラズとありますが鳥類学を研究していたのはレブンワース連邦刑務所でのことです。
ロバートは高い知能に旺盛な知的好奇心を持ち合わせ研究に情熱を傾ける学者肌な性格で殺人を起こさなければどこかの大学で名誉教授になっていたような人物です。
そしてこれほどの人物ながら仮釈放されないのはなぜだろうと御本人のウィキを読むとなかなか辛いものでした。
全体的になんとも言えない気持ちになる作品でした。
ロバートは人生の早い時期に過ちさえ侵さなければ並外れた才覚を遺憾なく発揮していたのか?
これは環境次第といえると思いますが、そういう意味でいうと刑務所の看守や所長それに囚人たちは彼のよき理解者でした。
どれだけ傑出な才能を持った人物であろうと周りに良き理解者または観察者に出会わないすれば自分の関心や能力に気づかず一生を終えてしまうのだろうと思います。
最近YouTubeでニュースを観ていたら関連動画のキャッチのテロップに「天才の対談!」「日本が世界に誇る天才!」といった文言が散見されるようになりました。
少し前(かなり前?)にはSNSのバズワードにギフテッドが挙げられたりと何か特殊な能力を持っていることを顕示することや自称他称問わずその能力を持っている人々の御神託がネットの世界には溢れています。
がしかし、悲しいかな。世の中の人々を天才か凡人かで分けると99.999%は凡人のカテゴリーに入ることになります。
自分に何か特殊な能力が秘められている幻想に浸り己を肥大化させている人間は十中八九凡人でしょう。
凡人の私達に必要なのはもし天才に出会ってしまったらどうやって接したらいいのかという知恵や知識ではないでしょうか?
みんながみんなサリヴァン先生になる必要があるとは思わないけれど、万が一のために頭の片隅には入れておいた方がいいのに、仮にも現代の情報収集源であるインターネットがこんな仕様ではと思ってしまいます。
そのような思いに少しだけ答えてくれたのがこの作品でした。
私はこの作品でロバートよりも周りの人々をずっと観ていました。
ロバートが最ものびのびと研究に打ち込めたレブンワース刑務所では看守は鳥の飼育に打ち込む彼を見守り、彼の隣の独房に入れられた囚人・フィトは彼を励ましたり褒めたりします。
天才に万が一会ってしまったら私も彼らの真似をしようと思えた作品でした。
しかしフィトの役回りは遠慮します