イタリア映画を観ました。
以前までイタリア映画と聞いて思い浮かべるのは青い空と青い地中海が見える港町が舞台で教会がある広場の近くトラットリアでピッツァを食べながら「チャオ!シニョリーナ!」とかナンパしているような作品だと偏見を抱いていました。
偏見というより願望かもしれませんが、日本でいったら現代にも関わらず侍が「なんとか左衛門、刀を交え候」とか言って芸者の取り合いのために街中でチャンバラやって負けたら切腹するようなものを求めていたのだから由々しき事態です。
といってもチネチッタは今でもあんまり観たことはないのですが、そんなイタリア映画を1作紹介します。
・赤い砂漠 ミケランジェロ・アントニオーニ
ジュリアナは交通事故が原因か引き金かで精神的ショックを負ってしまい誰にも相談できない中、夫の同僚・コラードに段々心が惹かれていくという内容の作品です。
ただこの作品の魅力はなんといっても映像にあると思います。
アンドレイ・タルコフスキーに似てるな〜と思って調べてみると、タルコフスキーはアントニオーニから影響を受けているようです。
工場や送電塔や街の通りや霧深い埠頭そして港の監視員小屋でのパーティなどのショットは統一された色彩や陰影に絵画のような印象を受けます。
作品の中に流れる時間感覚はゆったりしている中でジュリアナの不安や孤独を映像で物語っています。
「辛い」「苦しい」などのセリフは覚えている限り出てこないのですが、ジュリアナが抱える閉塞感を陰影や寒色を基調とした画面構成で表現しているように感じました。
観ているこっちも息が詰まります。
曇り空に誰も通らない通りに工場やタンカーなどの人工物をカメラが捉えた時にそれらはすごく寂しい雰囲気を醸し出しています。
どうやったらこういう風に撮れるのだろうと思いながら観ていました。
先日Z級映画を観たので「どうして同じような機材使ってるのにここまで違うのか」と疑問に思ったのですが、よく考えたらカメラも道具であり技量が必要なことをすっかり忘れていました。
キャンバスと絵筆揃えたら誰でもクロード・モネやエドワード・ホッパーのような絵が描けるわけではないのと同様という当たり前のことを忘れるとは。
アントニオーニ監督とカルロ・ディ・パルマ撮影監督は映像のマエストロなんだからそもそも比べることすら失礼な話でした。
そして映像美に魅了されるのですが、同時に睡魔にも襲われる作品でもあります。
結構寝落ちしかけました。