ドライブ・マイ・カーの濱口監督が尊敬しているインディーズ映画界の巨匠・ジョン・カサヴェテスの作品を観ました。
インディペンデントや自主制作などのインディーズ映画は今までほとんど観たことも触れる機会もなかったので結構緊張しながら視聴。
最初はよく分からなかったのですが、後々になってカサヴェテスの意図のようなものを汲み取ってからは「こりゃすごい」と思いながら観ていました。
日を開けてまた観たい作品です。
・フェイシズ ジョン・カサヴェテス
タイトルにあるように顔のクローズアップが多く、おそらくハンディカムで全編撮られている富裕層夫婦のリチャードとマリアの周辺を捉えた作品。
登場人物たちが縦横無尽に動き回る姿を追うドキュメンタリーのような作風でこれは観察映画やシネマ・ヴェリテとよばれる手法のようです。
このような前知識を入れずに視聴した私はカサヴェテス監督の意図がよく分からず1時間半ほどずっと困惑していましたが、マリアは友人と共にライブハウスヘ行きそこで出会った青年を友だちと共に家に誘います。
友だちの内のマダムがレコード台へもたれかかり、青年が彼女に近づきます。
彼女はキスされると思っていたのですが青年はただレコードの音量を調整するだけで終わります。
ここまでずっと私は「ストーリーいつ始まるんだ?」と思っていたわけですがそれが大きな誤解でこの作品は最初からストーリーではなく人を描いていたことに気づきました。
そのように見るとこの作品の素晴らしさが伝わります。
ずっと人だけを捉えて作品を作品を一作製作してしまうなんてまるでチェーホフのようです。
ストーリーに依存していないので登場人物たちは役割のようなものを与えられていない自由な存在で、これは自身も俳優であるカサヴェテスの願いのような印象を受けました。