アルゼンチンの作家・レオポルド・ルゴネスの作品を読みました。
タイトルは『火の雨』で全15ページの短編です。
レビ記26‐19 ―汝らの天を鉄の如くに為し汝らの地を銅の如くに為さん―
序文にちっちゃく書いてあり最初に読んだ時は読み飛ばしていましたが、どうやらこの作品は聖書の一節からインスピレーションを得て書かれたようです。
この作品は1回読んだだけではその魅力がいまいち掴めず2回目に読み直してからじわじわと体に浸透してくる不思議な作品でした。
こういう何度も読んでじわじわ身にしみてくる感覚がラテンアメリカの幻想文学・魔術的リアリズム作品の魅力だと思います。
ある素晴らしい天気の日にとつぜん熱せられて溶けた銅の雨が降ってきます。
最初はパラパラと少しの間降り、そして止みます。
主人公の「私」は銅の雨が止んだので食事を取りその後シエスタへ、そうしているとまた銅の雨が先程より強く降ってきます。
レビ記にあるように地面が銅で覆い尽くされるまで銅の雨が降りしきる中での「私」と街の様子が描写されていきます。
最初の銅のにわか雨が止んだ後の街の人々の不思議で幻想的な様子から銅の豪雨での阿鼻叫喚な情景とまるで世界の終焉です。
もしかしたら「私」や街の人々は近々銅の雨が空から降っていることをなんとなく察していたのではないかとも思ってしまいました。
また最後まで読みまた読み返してみると誰の視点でこの物語が語られているのか分からなくなります。